歯みがきをしようとすると、母がぎゅっと口を閉じてしまいます。無理にこじ開けるわけにもいかず、そのままにしてしまうことが増えました。
口を閉じてしまうのには理由があることが多いです。無理に開けようとする前に、まず「なぜ拒否しているのか」を考えてみると、対応の糸口が見つかります。
なぜ口腔ケアを拒否するのか
理由と言われても、本人に聞いても分からないことが多くて。
認知症のある方の場合、次のような理由が重なっていることがあります。
拒否の主な理由
- 覚醒が悪く、何をされるか分からず戸惑っている
- 口の中に痛みがあるが、それをうまく伝えられない
- 何をされるのか理解できておらず、不安を感じている
- 過去に痛い思いをした記憶があり、身構えている
一度に最初から最後まで終わらせようとせず、そのときにできるところまでで区切ることが大切だとされています。無理に急いで終わらせようとすると、次のケアがさらに難しくなることがあります。
声かけの工夫
何か声のかけ方でコツはありますか。
歯ブラシをいきなり口に入れるのではなく、まず見せながら「これから歯をみがきますね」と伝えることが効果的だとされています。何をされるか分かるだけで、受け入れやすくなる方が多いです。
それでも嫌がる場合は。
ケアを受け入れているかを都度確認しながら、集中が続かないようであれば時間を短く区切る、話しかけながら和やかな雰囲気を作るといった工夫が有効です。それでも難しいときは、その日は無理をせず、うがいだけにする、次の機会に回すという判断も必要です。
誤嚥のリスクがある場合は注意が必要です
むせやすいので、歯みがきのときにお水を使うのが怖いです。
それは重要な気づきです。誤嚥リスクのある方への口腔ケアでは、口の中の汚れを気管に入り込ませてしまう危険があるため、通常の水を使う方法が向かない場合があります。医療の現場では、水の代わりに口腔ケア用のジェルで汚れをやわらかくして絡め取り、吸引器で外に出す方法が使われることがありますが、これは吸引の技術や器具が必要な専門的な方法です。
⚠️ むせやすい方の口腔ケアは自己判断で始めない
誤嚥のリスクがある方への口腔ケアの方法は、訪問看護師や歯科衛生士など専門職に相談してから決めてください。自己判断で新しい方法を試すと、かえって誤嚥を招く危険があります。
用具という選択肢: うがい・歯みがきが難しいときに
うがいもうまくできないのですが、何か助けになる道具はありますか。
うがいや通常の歯みがきが難しい方の口腔衛生を支援する製品として、オーラバブルのような口腔ケア用品があります。水を使う通常のうがいが難しい方の選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。ただし、誤嚥のリスクが高い方への使用は、前述の通り専門職に相談してから判断してください。すべての方に合うとは限りません。
口腔ケアと誤嚥性肺炎の関係
そもそも、口腔ケアはそんなに大事なことなんでしょうか。
口の中の細菌は、誤嚥性肺炎をはじめとした全身の病気と関わりがあるとされています。要介護の高齢者では、歯垢の中から肺炎の原因菌が高い確率で見つかるという報告もあり、口腔ケアによって口の中の細菌を減らすことは、誤嚥性肺炎のリスクを下げることにつながるとされています。ただし、口腔ケアだけで肺炎を防げるというものではなく、栄養状態や嚥下機能など他の要素も関わります。心配な症状がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。
どこに相談すればいい?
誰に相談するのがいいでしょうか。
歯科的なケアの方法は訪問歯科や歯科衛生士、誤嚥リスクの判断はかかりつけ医や訪問看護師が専門です。ケアマネジャーに相談すれば、必要な専門職につないでもらえます。
相談時にそのまま使える質問メモ
- 誤嚥のリスクがあるのですが、どんな口腔ケアの方法が安全ですか?
- 拒否が強いときの声かけの仕方を、一度実演してもらえますか?
- 訪問歯科や歯科衛生士に来てもらうことはできますか?
- うがいや歯みがきが難しいのですが、代わりになる方法や用具はありますか?
- 口の中に痛みがありそうなのですが、診てもらう方法はありますか?
まとめ
| 状況 | 主な対応・選択肢 | 相談先 |
|---|---|---|
| 理由が分からず拒否される | 歯ブラシを見せてから声かけ、時間を短く区切る | 家族での工夫から |
| 過去の痛い記憶がありそう | 無理をせず、その日はうがいだけにする | ケアマネジャー |
| むせやすい・誤嚥が心配 | 水を使わない口腔ケア(専門職による吸引を伴う方法) | 訪問看護師・歯科衛生士 |
| うがい・歯みがきが難しい | 口腔ケア用品(用具の選択肢の一つ) | 家族で検討・専門職に確認 |
| 歯や歯ぐきの痛みが疑われる | 訪問歯科の受診 | ケアマネジャー・訪問歯科 |
「口を開けてくれない」にもいろいろな理由があるんですね。無理にやらせようとしていた自分を反省しました。
口腔ケアは、本人にとって「気持ちよかった」と感じられることが、次のケアにつながる一番の近道だとされています。うまくいかない日があっても、責めすぎずに続けていってください。