寝たきりの父の体を、自宅でどう洗えばいいのか分かりません。清拭でいいと聞いたことはあるのですが、やり方に自信がありません。
清拭には正しい手順があり、知っておくと負担も仕上がりも変わります。まずは基本の方法をお伝えし、そのうえで「清拭だけでは難しくなってきた」ときの選択肢もご紹介します。
清拭の基本: 湯温と順番
お湯の温度は何度くらいがいいのでしょうか。
タオルをお湯に浸して絞ると、お湯の温度より8〜10℃ほど下がります。そのため、お湯そのものは50〜55℃程度、手を入れられる中で一番熱いくらいの温度にしておくと、体に当てたときにちょうどよい温かさになります。
拭く順番も決まっているんですか。
基本は体の上から下へ拭いていきます。顔(おでこ→目→頬・口→あご→耳)、腕(指先から心臓に向かって)、首・胸・お腹、そして足という順番です。一度に全部の服を脱がせると体が冷えてしまうので、拭く部分だけ順番に脱がせながら進めます。
清拭の基本の流れ
- お湯を50〜55℃程度に準備する(タオルに浸すと8〜10℃下がるため)
- 拭く部分だけ順番に脱衣する(全身を一度に脱がせない)
- 顔 → 腕 → 首・胸・お腹 → 足 の順に拭く
- 拭いたあとはすぐに乾いたタオルで水分を取り、冷えを防ぐ
- 仕上げに保湿を行う
毎回きちんとできているか、正直不安です。
手順通りにできているかより、ご本人が寒い思いをしていないか、痛いところに強く触れていないかを見てあげることの方が大切です。皮膚が薄く乾燥しやすい方は、力を入れすぎたこすり洗いが負担になることもあるので、優しく拭くことを意識してください。
清拭だけで難しくなってきたら
清拭を続けているのですが、においや汚れが気になります。お湯につかりたいという本人の希望もあって。
そのお気持ちはとても自然です。清拭は体を清潔に保つ有効な方法ですが、湯船につかる爽快感や、全身をしっかり洗い流す効果までは代わりになりません。ここからは、清拭の負担を減らしたり、入浴に近いケアをしたりするための選択肢です。
公的サービス: 訪問入浴介護
寝たきりでも、お風呂に入れる方法はありますか。
介護保険の「訪問入浴介護」があります。看護職員と介護職員が自宅を訪問し、持参した専用の浴槽で入浴を介助してくれるサービスで、要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた方が利用できます。ベッドから浴室まで移動できない方のために作られたサービスなので、寝たきりの状態でも利用しやすいのが特徴です。回数や頻度はケアプランによるので、ケアマネジャーに相談してください。
用具という選択肢: ベッドの上で洗身・洗髪する
訪問入浴の間の日は、やっぱり清拭が中心になりますよね。
そうですね。その間を埋める選択肢として、ベッドの上で体や髪を洗うための機器もあります。たとえばスイトルボディのように、ベッドに寝たまま使える洗身・洗髪の機器を使うと、清拭よりも踏み込んだ洗浄ができる場合があります。訪問入浴の日数を増やせない、あるいは頻度を補いたいときの選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。
⚠️ 用具を検討するときの注意
このような機器は介護保険の給付対象になるとは限りません。購入を検討する際は、価格や設置条件を確認したうえで、ご本人の体調や医療的な管理状況について、かかりつけ医や訪問看護師にも相談してください。
なお、シャワーチェアや浴槽用手すりなどの「入浴補助用具」は、介護保険の特定福祉用具販売の対象です。厚生労働省の告示で対象品目が定められており、腰掛便座・入浴補助用具・簡易浴槽など5種目が該当します。支給限度額は毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で合計10万円までで、自己負担は所得に応じて1〜3割です。
特定福祉用具販売を使うときの流れ
- ケアマネジャーに相談し、「福祉用具サービス計画書」を作成してもらう
- 都道府県などの指定を受けた事業者から購入する
- いったん全額を支払う
- 「福祉用具購入費支給申請書」を市区町村の窓口に提出する(償還払い)
ケアマネジャーへの相談を購入の前に済ませておくことが大切です。相談なしに自己判断で購入すると、対象外になる場合があります。
どこに相談すればいい?
結局、まず何から手をつければいいでしょうか。
すでにケアマネジャーがいる方はケアマネジャーへ、まだ介護保険を使っていない方は地域包括支援センターへ相談してください。障害のある方は区市町村の障害福祉の窓口が窓口になります。入浴に関する選択肢の全体像は、親をお風呂に入れられないときの選択肢でも整理しています。
相談時にそのまま使える質問メモ
- 訪問入浴介護は、週に何回くらい利用できますか?
- 訪問入浴の日以外は、どのようにケアするのがよいですか?
- 入浴補助用具を検討していますが、特定福祉用具販売の対象になりますか?
- ベッド上で使う洗身・洗髪の機器を検討しているのですが、注意点はありますか?
- 清拭のやり方が合っているか、一度見てもらうことはできますか?
まとめ
| 状況 | 主な選択肢 | 相談先 |
|---|---|---|
| 基本の清潔ケア | 清拭(湯温50〜55℃、上から下へ) | 自宅で実施 |
| 寝たきりでも入浴に近いケアがしたい | 訪問入浴介護(介護保険) | ケアマネジャー |
| 訪問入浴の間の日を補いたい | ベッド上で使う洗身・洗髪の機器 | 家族で検討・かかりつけ医に相談 |
| 入浴補助用具の購入費をおさえたい | 特定福祉用具販売(年間10万円まで) | ケアマネジャー |
清拭にもきちんと手順があると分かって、少し自信が持てました。それでも難しいときは、一人で抱え込まずに相談してみます。
はい。清拭も訪問入浴も用具も、すべて「本人の清潔と安楽を保つ」ための手段です。どれか一つに絞らず、組み合わせながら無理のない形を探してください。